新聞/雑誌/ラジオ/テレビ/マスコミ四媒体広告費

マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む):2兆3,161億円(前年比96.6%)

新聞広告費:3,512億円(前年比95.0%)

  • コロナ禍による低迷から回復した業種があるものの、2023ワールド・ベースボール・クラシックやラグビーワールドカップ2023などの大型スポーツイベントが広告費を押し上げるには至らず、前年の北京2022冬季オリンピック・パラリンピック開催の反動減や物価上昇などの影響を受け、通年では減少した。
  • 業種別では、「交通・レジャー」が前年比114.9%と前年に引き続き増加。一方で、通販系商材が各業種で減少しており、「流通・小売業」は通信販売を中心に同88.9%、「食品」は通販系サプリメントを中心に同90.6%と減少した。また、「官公庁・団体」は前年の第26回参議院議員通常選挙の反動減により、同82.4%となった。
  • 中央紙と地方紙で区分すると、中央紙のほうが「官公庁・団体」業種の減少の影響が少なく、前年比は高い傾向となった。
  • 2024年は、世界情勢や物価や人件費高騰などの影響が依然として続き、広告主の宣伝予算のデジタルシフトも加速しているため、新聞広告出稿への需要影響は今後も不透明。一方で、パリ2024夏季オリンピック・パラリンピックの開催が予定されており、広告需要の増加が見込まれる。

雑誌広告費:1,163億円(前年比102.0%)

  • 紙の出版物推定販売金額は前年比94.0%と減少した。内訳は、書籍が同95.3%、雑誌が同92.1%となった。一方で、電子出版市場は同106.7%と引き続き成長した。紙と電子出版を合わせた出版市場全体は同97.9%となり、前年を下回った。(数字出典:出版科学研究所「出版指標」2024年1月号)
  • 雑誌広告費は、4-6月期以降復調し、通年では前年比102.0%となった。世界情勢や物価、人件費高騰などのリスク要因は引き続き大きいが、雑誌広告領域では、コミックIP(知的財産)の販促活用手法が定着。また、出版社の得意とするコンテンツ制作力や、ファンベースマーケティングの価値が広告主から見直され、雑誌を核としたデジタルやSNSへの二次展開、リアルイベント開催などの大型キャンペーン展開が増加した。出版各社は引き続きデジタル事業、コンテンツ事業、海外事業などに軸足をシフトしつつ、「紙媒体」としての雑誌の価値や役割を最大限に生かし、広告主のソリューションニーズの多様化に的確に応える施策を展開していく。
  • 出版各社は「コンテンツ」「コミック」「海外」に加えて「雑誌流通・販売の変革と効率化」を事業の中心に据え、XR※1(クロスリアリティ)、縦スクロールコミック※2、データプラットホームの多面的活用(読者データ・販売データ)、出版社自社によるコンテンツ資産の海外での事業化などを行っていくと考えられる。

※1 現実世界と仮想世界を融合することで、現実にはないものを知覚できる技術(VR<仮想現実>、 AR<拡張現実>、MR<複合現実>など)の総称。

※2 スマートフォンでの閲覧に特化した「縦スクロール」「オールカラー」のウェブコミック。

ラジオ広告費:1,139億円(前年比100.9%)

  • 通年で前年を上回り、前年比100.9%となった。
  • 業種別では、コロナ禍からの回復や外出・行楽需要の高まりにより「ファッション・アクセサリー」(前年比136.7%)、「外食・各種サービス」(同110.7%)が増加した。
  • コロナ禍からの回復により、ラジオ放送事業者主体のリアルイベントも多数開催された。番組コンテンツの人気の高まりを受けイベント規模が拡大しており、今後もこの傾向は続くとみられる。

テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連) 1兆7,347億円(前年比96.3%)

地上波テレビ 1兆6,095億円(前年比96.0%)

  • 地上波テレビ広告費は1兆6,095億円(前年比96.0%)となった。
  • 番組(タイム)広告費は、2023ワールド・ベースボール・クラシックなどの大型スポーツ大会や各種イベントの開催に伴い好調に推移したものの、レギュラータイムの低調が影響し、前年の北京2022冬季オリンピック・パラリンピックやFIFA ワールドカップ カタール 2022などの反動減を打ち消すには至らなかった。
  • スポット広告費は、1-3月期は「情報・通信」や「飲料・嗜好品」が低調で、4-6月期は新型コロナの5類感染症移行に伴うトラベル関連や映画の大型タイトルにおける出稿量が増加した結果、「交通・レジャー」が回復した。7-9月期は外出機会が増えたことによるメイクアップ製品の需要増や、インバウンドの増加に伴うキャッシュレス決済の利用拡大などがみられた。10-12月期は10月1日より施行された酒税法改正の影響を受けアルコール商品を中心とした「飲料・嗜好品」が好調であった。
  • 2024年は、「令和6年能登半島地震」による被災や世界情勢の混迷による原材料費高騰、さらにエネルギー不足などによる不安定な経済情勢が続くとみられるが、番組(タイム)広告費は、パリ2024夏季オリンピック・パラリンピックをはじめ、世界的な大型スポーツイベントや各種イベント実施などによる広告主各社のマーコム(マーケティングコミュニケーション)戦略のさらなる活性化が期待される。スポット広告費においては、引き続きさらなるインバウンド需要、国内旅行や外出機運の高まりによる広告需要の回復が見込まれ、「化粧品・トイレタリー」「交通・レジャー」が好調なスタートとなっている。(2024年2月時点)

衛星メディア関連 1,252億円(前年比100.1%)

  • BSは通信販売(通販)市場がコロナ禍での鈍化傾向からの回復により好調に推移し、前年を上回った。
  • CSとCATVは通販系以外の広告減少により、前年を下回った。
  • 2023年は、大型スポーツイベント(野球、水泳、陸上、ラグビー、バスケなど)がBSやCSでも数多く放送された。
  • 2024年は、通販市場は前年より若干の鈍化傾向が見込まれるものの、BSは引き続き好調と予想。CSは減少傾向が続く中、新たな収益源獲得に向け、事業・制作などの放送外収益の受注にシフトしつつある。

(億円、前年比%)

  2022年 2023年 前年比
衛星メディア関連 1,251 1,252 100.1
BS 936.6 954.0 101.9
CS 159.3 151.3 95.0
CATV 155.0 146.3 94.4

※衛星メディア関連(合計値)は、小数点以下を四捨五入。

マスコミ四媒体広告制作費:2,535億円(前年比97.1%)

(注)広告制作費は、衛星メディア関連を除く新聞・雑誌・ラジオ・地上波テレビの広告費に含まれている。

  • マスコミ四媒体広告制作費のうち最も大きい地上波テレビCM制作費は1,981億円(前年比97.7%)となった。コロナ禍も落ち着き、行動制限も解除されインバウンドも回復に転じたものの、テレビ広告予算はやや減少した。制作費はテレビ以外の様々な動画制作が増加しており、テレビCMと同時に制作するケースも増加している。その他の媒体の制作費動向としては、デジタルシフトが加速する中で新聞広告制作費は前年に続き減少傾向となった。(なお、マスコミ四媒体広告制作費の内訳は、地上波テレビCM制作費以外は非開示)
  • 業種別では、「交通・レジャー」が前年同様伸長し、「薬品・医療用品」「外食・各種サービス」などが増加した。一方、官公庁の広報や国政選挙がなかったことから「官公庁・団体」は大きく減少。スマートフォンやネットワークの代替需要がひと段落した「情報・通信」も減少した。さらに、「家電・AV機器」「ファッション・アクセサリー」「自動車・関連品」などもマイナス傾向だった。
  • 今後も引き続き広告主、広告会社、制作会社の三者連携を継続し、働き方改革に加えDXの推進などで生産性の向上に努めている。

2023年 マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む)の四半期別伸び率

「マスコミ四媒体広告費」(衛星メディア関連も含む)を四半期別にみると、年間を通してマイナス傾向が続いた。

(前年比、前年同期比、%)

マスコミ四媒体広告費
(衛星メディア関連も含む)
2022年1-12月 1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
97.7 99.2 96.3 101.2 97.1 97.7 95.0
2023年1-12月 1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
96.6 96.3 96.8 96.2 96.5 96.3 97.3